知られざる地球の不思議さと手つかずの大自然を肌で感じる究極のエコツアー。地球の鼓動が聞こえる大地「南極」、
イヌイットの住民達、野生動物との出会いがある「北極」。何かを感じさせてくれる極地旅行。
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南極大陸最高峰ビンソンマシフ登山レポート
outdoor station まほろば 
佐々木 司 さん

2025年12月にビンソン・マッシフ登頂を果たされた佐々木さんより、先日掲載させていただいたアンケートに続き、詳細な遠征レポートをお送りいただきました。
実際に挑戦されたからこそ伝えられる臨場感、そして準備のポイントや現地での体験、南極ならではの環境など、これから登山を計画されている方にとって大変貴重な内容となっています。是非、ご覧ください。

2026年1月3日 BC 2140m

天候は晴れ。気温は−22℃です。
朝は5時30分に起床しました。
いつも通り早めに目を覚まし、慌てることなく、ゆっくりと身支度を整えました。
南極では朝が遅く、行動開始時間も自然と遅くなります。
それでも、周囲のペースに無理に合わせることはせず、自分のリズムを崩さないことを意識していました。こうした「いつも通り」を保つことが、結果的に体調管理にもつながります。

9時に朝食をとり、食後は自分の装備をダッフルバッグにまとめてソリへ積み込みました。
ソリを引くためのロープは、バックパックと結びつけます。
11時10分、出発です。
ガイドのJB(ネパール)、私(日本)、フェルナンド(スペイン)、イェン(イギリス)、ケーシー(アメリカ)の多国籍パーティです。
空は青く、風もありません。南極では本当に貴重なコンディションです。
「こんな日は少ないよ」と、ガイドのJBが話していました。出発時の服装は、薄手のベースレイヤーにモンベルのトレイルアクションパーカ、アウターとして薄手の保温着を着用しました。
下半身は厚手のベースレイヤーにトレッキングパンツその上にシェルパンツを重ねました。
足元は三重靴(高所靴)、アイゼン着用、手袋はテムレス、頭にはニットキャップを被ってスタートしました。

斜度はきつくなく、広い斜面を淡々と歩いていきます。しかし、気温は低いのですが、風がなく行動中はとにかく暑く、気がつくと滝のような汗をかいていました。
歩き始めて約1時間後、最初の休憩でアウターを脱ぎ、ニットキャップはハットに、手袋も軍手へと変更しました。下半身もベースレイヤーとシェルパンツで十分でした。
大量に汗はかきましたが、湿度が極端に低い南極では、汗はすぐに乾いていきます。ただし、脱水していることに変わりはありません。汗が気化する際には体温も奪われます。
本当はもっとこまめに水分補給をしたかったのですが、休憩はおよそ1時間30分に1回のペースでした。暑さが苦手な自分にとっては、少し間隔が長く感じられました。
行動中は暑いのですが、立ち止まると急激に冷えてくるので、薄手の保温着は常に取り出しやすい場所に準備して脱ぎ着を繰り返しました。

17時、LC(Low Camp)に到着しました。暑さの影響もあり、かなり疲れていました。BCからの距離は約9km、標高は2780mです。
到着後、すぐにテントを設営しないと身体が冷えてしまうので、LC到着後の最優先事項がテント設営でした。他の隊はテントも自分たちで運んで来ますが、我々ALE隊はあらかじめ残置されているテントを使用することができました。
3人用テントを、2人で使用します。
キッチンテントも残置されているものをガイドが設営し、ローキャンプではガイドが食事を作ってくれました。夕食を食べながらのミーティングで、翌日の朝食(ブランチ)は11時と言われました。
ローキャンプに陽射しが当たるのが11時以降になるため、それに合わせて行動開始時間も設定されています。

ここLow  Campの標高は2780mですが、極点に近い場所では大気の密度が低く、標高3000m以上の酸素濃度になります。高山病を防ぐために水分補給を意識し、食後すぐに横にならない、頭を冷やさないなどのセルフケアを心がけ、21時に就寝しました。
この時点ではテントの中は暑いくらいでしたが、Low Campが日陰になる深夜2時を過ぎた頃から、急激に冷え込み始めました。ユニオングレイシャー基地は1日の寒暖差が少ないし、そもそもそんなに気温は低くくありません(−8℃程度)。ビンソンマシフBCでは−22℃ぐらいになりますが、太陽の角度や風などの条件次第で体感温度は寒暖差を感じます。それがLow  Campになると気温は−26℃程度ですが一日の寒暖差は更に感じるようになってきました。

2026年1月4日Low  Camp停滞

11時に食事をとりながら、今後の行動についてミーティングを行いました。この日はハイキャンプ周辺の風が強いこと、また登頂日を1日遅らせた方が天候が良さそうであることを理由に、ローキャンプで滞在することが決まりました。
ここにソリを残置し、ここから先は100ℓザックに荷物を詰め込んで行動することになるため、時間を十分にかけてパッキング作業を行いました。
食料については、停滞日の可能性を考慮し、3泊分の朝食と夕食、さらに日中の行動食を持つようガイドから指示がありました。その他にはシュラフ等を携行し、私はダウンスーツも持参していたため、重量は17〜18kg程ですが、100ℓザックはいっぱいになってしまいました。
ダウンスーツを着用して行動すれば荷物を減らすことはできましたが、前日の行動中の暑さを考えると、とてもその気にはなれませんでした。
また、ローキャンプからハイキャンプまでの間には、約45度の急斜面を1200mにわたってアッセンダーを使用して登る区間があるため、アッセンダーの使い方やセルフビレイの取り方についてチーム内で確認、共有を行いました。
アッセンダーの使用経験があるメンバーばかりでしたが、使用する掛け声や凍結対策として安全環付きカラビナは使用しない(各自を繋いでいるロープは安全環付き)など、南極ならではのルールもあり、全員が真剣に確認作業を行いました。

2026年1月5日 晴れ 気温−26℃

11時に食事テントでブランチをとりました。この時、今日はハイキャンプを目指して出発することが正式に告げられました。
すでにパッキングしていたザックに、水分を2.5ℓ追加しました。
服装は、ヘルメット、ハット、サングラスを着用。上半身は薄手のベースレイヤーにモンベルのトレイルアクションパーカ、アウターとして薄手の保温着を着ました。
下半身は厚手のベースレイヤーにシェルパンツのみ。中間着のズボンはローキャンプに残置することにしました。
グローブもしっかりした冬山用のグローブにしました。ガイドは、グローブと顔まわりの保護(保温)について、特によくチェックしていました。
ザックの一番上には厚手のダウンを入れ、すぐに取り出せるようにしていました。

12時30分、ローキャンプをスタートしました。
ローキャンプからアッセンダーのスタートポイントまでは、広く緩やかな道を約1時間歩きます。ペースはゆっくりで、呼吸を乱さないことを意識しました。
アッセンダースタートポイントに到着し、斜面を見上げると、終わりが見えないほど真っ直ぐにロープが伸びていました。斜度は約45度。ロープは1200m続くと聞いており、途中で休憩できそうな場所は1か所ほどしか確認できませんでした。実際に休憩できたのも、その1か所だけでした。
ロープはヒマラヤでよく見るナイロン製ではなく、しっかりとした10mmのクライミングロープがフィックスされており、アンカーも二箇所で取られていました。ビンソンマシフにはガイド以外にもALE社のレンジャーが常駐しており、彼らがルートやキャンプ地の管理を常に行っています。
アッセンダーをセットし、いざクライミング開始です。
南極では、厚い氷床の上に雪が少し乗っているだけのため、先行者が作ったステップになったトレースを利用できることがほとんどありません。足元は常に固い氷の斜面で、これは思っていた以上に厳しいと、登り始めてすぐに気づきました。足元の緊張感、背中の100ℓザック、そしてロープでつながれているのは経験豊富な海外の強者たちというプレッシャー。これを富士山山頂付近の酸素濃度の環境で行っているわけです。

登り始めて約2時間が経った頃、「ランチリッジ」と呼ばれる少し広くなった場所で、ようやく休憩を取ることができました。まだロープの半分も登っていないのに、疲労感は相当なものでした。
ランチリッジで止まっていると、すぐに身体が冷えるため、水分補給と行動食を口にしたら、すぐに再出発しました。
後半は動きが止まりそうになりましたが、一度止まると動けなくなりそうだったため、「1 step 1 breath」を意識し、ゆっくりでも止まらないように登り続けました。
その先は広い斜面をさらに2時間ほど登り、ようやく目の前にハイキャンプが現れました。ハイキャンプ(HC)の標高は3780m、気温は−30℃。
風はそれほど強くないものの、吹いているため、体感温度はローキャンプとは比べものにならないほど寒く感じました。アイゼンを外している間にも、身体が急激に冷えていくのが分かりました。
HCはレンジャーも使用するため、ALE社の食事テントがすでに設営されており、まずはその中に入り、座り込みました。
ローキャンプ同様、すぐに自分たちでテント設営をしなければならないのですが、疲労が激しく、しばらく動くことができませんでした。私ほどではないものの、他のメンバーも疲労しており、誰も食事テントから出ようとしませんでした。
しばらく食事テントで休んでいると、ALE社のレンジャーとガイドが「設営しといたよ!」と言いながら戻ってきました。彼らのシェルパパワーとホスピタリティには、毎回驚かされます。

※ALE社:佐々木さんが今回参加された「ビンソンマッシフ登山」を企画・主催する南極大陸旅行専門の旅行会社です。

2026年1月6日 気温−32℃

LCと比べると寒さは厳しかったものの、ダウンジャケットを着てシュラフに入れば、特に問題なく眠ることができました。
いつものように早朝、テントの外に出てみると、目の前には快晴の空が広がっていました。何より風が弱い。これは大きなポイントです。とはいえ寒さは相変わらず厳しく、不必要にテントの外で長居をする気にはなりませんでした。
本日の行程は、ハイキャンプ〜山頂〜ハイキャンプ。移動距離は約14km。
予定行動時間は約12時間です。山頂直下には多少の斜度と岩場のトラバースがありますが、全体的には昨日のような急坂もなく、危険箇所は少ないとのことでした。問題になるのは寒さと風。その対策をしっかりするように言われました。

11時30分、サミットプッシュ開始。
服装は、上半身が薄手のベースレイヤーにモンベルのレイルアクションパーカ、下半身は厚手のベースレイヤー。その上にダウンスーツを着込みました。ヘルメットはハイキャンプに残置しました。
片手にピッケル、もう片手にトレッキングポールを持ちます。ビンソンマシフはテクニカルな場面がほとんどないため、ピッケルは長めでストック代わりになるものが適しています。
昨日と比べると斜度は緩く、歩きやすい斜面でした。ただ、外国人パーティとロープを繋いで歩くのはやはり慣れておらず、気を遣いながらの行動となりました。行動中は暑いぐらいで、ダウンスーツの上半身は脱いでいるか、前面を全開していました。

LCから見上げていたマウント・シン(4,661m)が、次第に真横に見えるようになってきました。その横にはタイリー(4,852m)も見えます。ビンソンマシフ、タイリー、シンはいずれもエルワース山脈に連なって聳え立っています。タイリーやシンは下の方からも見えていましたが、ハイキャンプを出発してから2時間ほど経った頃でしょうか、ようやくビンソンマシフの山頂の姿がはっきりと見えてきました。タイリーやシンが険しい山容なのに対し、ビンソンマシフはどっしりとした、包み込むような山容をしています。
振り返ると、どこまでも続く白の世界。その中に、点在するように突き出した山々が見えます。世界中を探しても、ここでしか見られないのではないかと思うほど、不思議で美しい景色でした。

薄い酸素濃度の影響で呼吸は苦しいものの、体調は良好でした。景色を楽しみながら登り続けること約7時間30分、ビンソンマシフ山頂直下に到着しました。ここでトレッキングポールを残置し、防寒対策を万全にして先へ進みます。
岩が飛び出した急な斜度を15分ほど登ると、山頂が50mほど先に見えました。岩場を慎重にトラバースしながら、山頂へと向かいます。

2026年1月6日 19時8分
南極大陸最高峰・ビンソンマシフの山頂に立ちました。

コース紹介


注)すべてのコースは、海外主催会社が催行する旅行ツアーとなります。お申込みにあたり、自己責任の上でのご参加となりますことご承知おきください。