「タロ・ジロ」にまつわる話 (11)宮内庁の思い出

南極から帰った年(1958)の夏。

越冬してきた隊員は皆、とてもとても多忙を極めていた。講演に引っ張りだこだったのである。

その忙しい時に宮内庁から文部省を通じて連絡があった。

「天皇陛下が11人の越冬隊員に面接される」と言うのだ。


南極大陸 第一次越冬隊めったに無いことなので、西堀越冬隊長以下全員は何とかして11人全員揃えようと努力した。

ところが、どのように日程を調整して見ても11人全員をそろえることが不可能だったのである。せいぜい 8・9人なら無理して集められるのが現実だった。

早速その旨、宮内庁に連絡してもらった。我々はそれで良いと思っていた。

そしたら何と、「11人顔をそろえなければいけない」と言う返事ではないか。

私達は驚き困惑した。「どうしよう?」 その時 西堀さんの返事はこうだ。

「全員でなければ駄目だと おっしゃるのならば 我々は 天皇陛下にお眼にかからなくても結構です」と。

その結果、この話は立ち消えになってしまった。

(写真)捕獲されたアザラシ。ここで毛皮をとる。後方は犬達

 

その後の情報に依れば、今まで「天皇がお目にかかると言われて断った人はいない」との事。「あなた達が始めての事です」

宮内庁とは変わった役所だなと、感心した。


南極大陸 第一次越冬隊それから少したってのこと。越冬中に我々(主に佐伯・藤井隊員)の手で撮影した16ミリのフイルムから 映画館上映用の映画に編集<日映新社>したものが出来あがった。
「11人の越冬隊」と言うのだ。

これの試写会を日比谷の映画館で行った。とても好評だった。映画上映後、越冬隊員11名中、都合のついたもの数名が、そのあと皇太子<ご結婚前の今の天皇>に面接することになった。

(写真)南極大陸氷上。犬をねぎらう北村隊員

 

我々が先に行って会見の部屋のドアのうち側で一列に並んでお待ちしていた。宮内庁役員の案内で室に入ってこられた皇太子を見て西堀さんが自分から進み出た。腰をかがめて「私 西堀です」と言いながら右手を差し出した。

皇太子はすかさず握手された。その後に続く他の隊員も、みな一歩踏み出してそれぞれ皇太子と握手した。私達はとても嬉しかった。

ところがその後、解散する段になって宮内庁役人の一人が言った。
「皆さん。チヨットお残り下さい」と。

私は何か記念品でもくれるのかなと思っていると、「皆さん。皇太子は日本国民とは握手をなさらないことになっておりますので、以降お気をつけ下さい」と重々しく言うではないか。
私は思わず吹き出しそうになったが、グッとこらえた。

今でもそうなんだろうか? 後から聞いた話だと外国人とは握手なさるのだそうだ。


菊池 徹 (2001.5.14)


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