「タロ・ジロ」にまつわる話 (6) 犬の恋愛

南昭和基地 樺太犬の子犬一般の犬がいつ発情するのか、私はよく知らない。
昭和基地の犬たちが何となくざわめき出したのは、現地の春、つまり8-9月頃だった。
子犬で連れて来た雌のシロがそろそろ思春期に達したのだ。鎖に繋がれた17頭の雄犬たちの間を自由気ままに「しゃなりしゃなり」と歩き回っている。
雄犬たちにとっては「無視」するわけにはいかない。ギャーぎゃー騒ぎ立てる奴。力一杯鎖を引っ張る奴。黙って視線を向けている奴…犬さまざまだ。
(写真)すぐに大きくなる樺太犬の子犬たち

 

私たち人間はシロのお婿さんにと「紋別のクマ」を選んだ。シロを至近距離につないで、結婚初夜を迎えさせた。ところがシロがどうしても許さない。親の決めた結婚なんていやだと言うわけだ。 
待つこと何日。ふとした時シロが鎖を離れた。
「まあいいや」と見ていたら、シロはすかさずジロの所に行くではないか。やはり若いのがいいのかな? 確かにジロは一番若いのだ。
「おや?」と思って見ている内に、2頭は仲良くなってしまった。シロにとってもジロにとっても初体験だったはずだ。

 

このシーンは我々若い隊員達にとって、とても刺激的なポルノである。お天気がいいので外に出て片づけ作業をしていたが、すかさず集まってきて、このポルノ実演を取り巻いて固唾をのんだ。
キッチンで夕飯の準備をしている砂田隊員にも連絡がとんだ。彼は「おっとり包丁」で駆けつけた。無電機のキーを叩いている佐久間隊員には、誰も連絡しなかったのだろうか?

 

夕飯のテーブル時、佐久間隊員がプンプン怒っている。本気で悔しがっているようだ。
「どうしてオレにも知らせてくれなかったのだ!!」と。
もっともな事だ。いつも通信で忙しがっている彼。一見まじめそうな彼にも、当然連絡すべきだったのだ。 
犬係の私としては「すまん事をした。 お許しください」。

菊池 徹 (1999.01.15)


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